本記事は教養記事シリーズその11です。その他の教養記事はコチラの目次をご覧ください。
拒否権って?
なぜ拒否権を使ったの?
メキシコ国境の壁って?
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トランプ大統領拒否権発動
トランプ米大統領は15日、上下両院が可決した、メキシコ国境での壁建設のためにトランプ氏が出した「国家非常事態宣言」を無効にする決議案に対して拒否権を発動した。トランプ氏が2017年1月に大統領に就任して以降、拒否権を発動するのは初めて。
産経新聞[2019/3/16]
コチラの記事をかみ砕いて内容を分かりやすく説明していきたいと思います。
以下ではそれぞれの用語について詳しく見ていきたいと思います。
メキシコ国境の壁とは
トランプがメキシコ国境に壁を作る目的は「移民対策」です。メキシコからアメリカ国内に違法に侵入することを防ぐために実行されかけている政策の1つです。それにしても,あまりにも原始的すぎる方法ですよね…。もともと,メキシコ国境の壁設置はトランプが大統領選に出馬した時の公約の1つでもありました。
このような形の公約を示していましたが,北朝鮮との関係が悪化したことや想像以上に予算がかかってしまったことを受けて計画は頓挫してしまいました。
トランプの主張によると,壁を建設することで国家の安全が保たれるというのです。しかし,実際にはアメリカへの不法移民の約40%は合法ルートで入国した人間で,残りの約60%が違法ルートで入国した人間になります。その60%のうちメキシコ国境から不法侵入した人間を対策するべく多大な費用のかかる壁を建設するというのはあまりにも非現実的な政策ではないかと思わざるを得ません。
国家非常事態宣言とは
2019年2月16日,トランプ大統領はメキシコ国境の壁建設を目指して国家非常事態宣言を発令しました。国家非常事態宣言というのは,戦争や大規模な自然災害が発生した時に国の最高権力者が発動できる宣言のことを指します。戦時中は権力行使に悪用されることもありました。
そもそものキッカケは,上下両院議員から構成された委員会によってメキシコ国境の壁の建設費用がトランプの要求した額の4分の1程度しか与えられなったからです。しかし,なぜここまでしてトランプはメキシコ国境の壁を作りたいのでしょうか。
主には政治的な理由が挙げられます。もともとトランプが大統領選で勝利したのも,メキシコとの国境に壁を作るという公約を掲げて移民に仕事を奪われていた貧困層の支持を得たからです。公約の遂行という意味でも壁の建設にこだわり続けているのでしょう。
拒否権とは
アメリカ大統領が連邦議会に対して有する権限。連邦議会で可決された法律案は,通常大統領の署名を得てはじめて発効するが,その際に大統領が署名を拒否し発効を妨げえることをいう。この場合,大統領は異議の理由を付して発議した院に送り返すが,両院が3分の2の多数で再度可決すれば大統領の拒否をこえて法律になる。
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典
通常,連邦議会で可決された法律案は大統領の署名を受けて初めて発行されます。つまり,大統領拒否権とは,大統領には法律案の署名を拒否する権利があるということなのです。今回の例でいうと,国家非常事態宣言を無効にするという決議案に対して署名をしなかったということになります。今後,両院が3分の2以上の賛成で決議案を再び可決すれば,決議案は拒否権をこえて成立します。
まとめ
大半の移民専門家は、壁を建設してもトランプ氏が指摘する問題は何1つ解決できないとの見解で一致している。
出典:REYTERS
主に政治的な理由から壁の建設にこだわり続けるトランプ大統領。2020年の大統領選を見据えての行動なのかもしれませんが,国内外の移民専門家からは批判の声が上がっています。トランプ大統領の強引なリーダーシップを代表するような案件であり,どのように収束させるかに注目が集まります。