本記事は教養記事シリーズその5です。その他の教養記事はコチラの目次をご覧ください。
大阪都構想とは?
メリット・デメリットは?
今はどういう状況なの?
大阪都構想とは
大阪都構想を一言でまとめると「大阪市を廃止して4つの特別区に分ける政策」のことを指します。目的は「大阪市の財政や権限を大阪府に還元させる」というものです。
もっとかみ砕いて説明してみます。大阪都構想では,東京市が23区に解体されたように大阪市も4区に解体するべきだと主張しています。大阪市は非常に裕福な市の1つであるのに対し,大阪府は貧乏な市の1つです。また,大阪市は日本で2番目に人口が多い市で政令指定都市に指定されていますので,非常に強い権限を持っています。このような背景から府は市の財政や権限を利用したいと考えているのです。
東京市が解体された理由は戦時中に権力のコントロールをするためだったとされています。同じことが大阪都構想にもいえます。簡単に言ってしまえば,都構想というのは中央集権型の運営を目指す政策だといえます。
利点・欠点
大阪都構想によって大阪にはどのような利点と欠点があるのでしょうか。以下で詳しく見ていきます。
利点
当初は都構想により4000億円の効果が見込めるとしていました。しかし,市の調査によると実際にはそこまで効果が大きくない(1億円程度)とされています。
他にも,従来から続く大阪府と大阪市の二重行政が解消されるというメリットもあげることができます。大阪の二重行政というのは,大阪府の中に非常に大きな力をもつ大阪市があるために政策やサービス提供が最適化されていない状況を指します。簡単に言えば,無駄が多い運営状況ということです。
大阪市を4つに解体すれば府の中で大きな権力をもつ市がなくなるので運営がスムーズにいくということなのです。しかし,実際には必ずしも大阪都構想により二重行政が解消されるという訳ではないという指摘もなされています。それどころか三重行政になる危険性があることも指摘されています。他には,4つの区ごとに区長を選出することで市民がより政治に参加しやすくなるというメリットも挙げられます。
欠点
大阪都構想のデメリットとしては,政策の実施に1500億円程度が必要であることが挙げられます。上でもお伝えした通り,本当に効果が1億円程度であればかなり多額の費用が必要であることが分かります。
そして,大きな欠点として「利点がハッキリしていないこと」が挙げられます。当初は4000億円効果を大きなメリットとして掲げていた大阪都構想ですが,効果が見込めないことが判明したことで都構想の利点が不明瞭になってしまいました。
さらに,大阪市が解体することにより大阪市は政令指定都市から外れてしまうため,もともと持っていた権限や財源が確保できなくなってしまいます。また,大阪市に住む人々にとっては欠点の方が多いでしょう。都構想が実現すると年間2200億円の大阪市民の税金が市外に流出するとされており,流出した2200億円の多くが大阪市外に使われるとされています。
最近の動向
大阪都構想は2010年に「大阪市と大阪府を一体化しよう」として立案されました。2011年には「効果は4000億円」とされますが,その後否定されています。2015年には住民投票により否決されており,2017年には住民投票の再実施に向けた協議会を設置しました。
まとめ
都構想の実現のためにははっきりとした目的とメリットが必要であり,同時にそれらの根拠も提示する必要があります。二重行政解消などは確かに目的の1つとなり得ますが,そのためには全府民が納得できるような根拠を示す必要があります。