本記事は教養記事シリーズその13です。その他の教養記事はコチラの目次をご覧ください。
イギリスのEU離脱って?
理由は?
最新の状況は?
EUとは
イギリスがEUを離脱した理由をお話しするために,まずはEUとは何かという内容からお話ししていきたいと思います。EUは「European Union」の頭文字を取った略称で日本語では欧州連合と訳されます。EUの目的は,ヨーロッパを1つの国のように扱うことです。
第二次世界大戦後のヨーロッパは,各地で紛争や対立が起こっており混乱していました。あらゆる問題に対応するために,ヨーロッパでは数多くの組織が作られました。
このような流れの中で,ヨーロッパを1つの国として扱うことで社会システムや経済をコントロールしようという目的でEUが設立されました。
EUでおさえておくべきポイントは以下の3点です。
1.ヒトの移動自由化
2.モノの移動自由化
3.共通通貨ユーロの導入
1つずつ詳しく見ていきましょう。
ヒトの移動自由化
EUの中では国境を越えてヒトが自由に移動できます。入国をしやすくすることで,経済の活性化や成長が促されます。ちなみに,シェンゲン協定という決まりもありますが,EUがヒトの居住や就労までを許可しているのに対してシェンゲン協定はヒトの出入国のみをパスポート無しで許可する決まりになっています。
モノの移動自由化
EU加盟国間の貿易では関税がかかりません。このようにすることで,各国の強みを生かして経済圏を作ることが可能になります。
共通通貨ユーロの導入
EU加盟国内では共通の通貨としてユーロを利用しています。このようにすることで,貿易が活性化されるだけでなくEU全体で金融面のコントロールが効くようになります。ただし,ユーロの導入には賛否両論があり最近ではEUで多くの国が財政破綻などの危機を経験しています。
イギリスのEU脱退
イギリスのEU脱退は,英単語をつなげた造語で「ブレクジット(Britain+Exit=Brexit)」と呼ばれています。ことの発端は,2013年に当時の首相キャメロン氏がEU離脱に関する国民投票の実施を約束したことから始まります。
そして2016年6月23日に行われた国民投票では,僅差ではありますがEU離脱派が勝ちました。2019年3月29日までの期間を移行期間として法整備や協定の見直しなどを行っています。しかし,なぜイギリスはEUを脱退するのでしょうか。主な理由を以下に挙げます。詳しく見ていきましょう。
●経済的に損をしている
●大量の移民
●おかしな法律
経済的に損をしている
EUの取り決めの中には,経済的に余裕がある国は貧しい国の手助けをしなさいという決まりがあります。そのため,経済的に比較的豊かであるイギリスはEU圏内の貧しい国に補助金や投資を与えていました。イギリスにとっては意味のない支出となりますので,EUを脱退することでその分の財源を確保するという目的があります。
大量の移民
EUはヒトの移動が自由ですので,イギリスにも多くの人がやってきました。
移民に関しては賛否両論ありますが,例えば貧しい人が大量にイギリスにやってくるともともと住んでいたイギリス人の雇用機会が失われてしまいます。他にも,「よい教育」を受けてこなかった人が大量に入ってくると,イギリスはその人たちの面倒を見なくてはならなくなってしまうのです。
おかしな法律
EUでは多くの法律が作られています。問題なのは,その多岐にわたる内容や厳しさです。例えば「ゴム手袋は洗剤を扱えなければならない」「掃除機の吸引力がすごすぎてはいけない」といった具合です。EU脱退派は,このような「どうでもよい」法律に縛られる必要もないと考えているようです。
デメリットは?
それでは,イギリスがEUを脱退するデメリットはないのでしょうか。これはメリットの裏返しでもあるのですが,以下のようなデメリットがあります。
●欧州という単一市場を手放すことになる
●経済成長を支えた移民が少なくなる
●関税がかかるようになる
●各国と再び各種協定を結ぶ必要がある
●信用度が低下してポンド安になる
最新の状況は?
英下院のバーコウ議長は、メイ首相の欧州連合(EU)離脱案を3度目の議会採決にかけることを事実上禁止した。予想外の展開は、首相の戦略に大きな狂いを生じさせた。
バーコウ議長は18日、すでに議会が拒否した案を再び採決に付すには、中身が大幅に異なるものでなくてはならないと指摘。これまでとほぼ同じであれば採決を許可しないと言明した。メイ首相のEU離脱交渉は完了し、3月29日の離脱まで時間はほとんどない。
ブルームバーグ[2019年3月19日]
この記事をかみ砕いて説明してみます。もともとイギリスの首相メイ氏はEUとの間で合意を得た離脱案をイギリスの議会でも通して「合意された状態で」EUを離脱しようと考えていました。しかし,2019年3月19日までに2度の否決をくらってしまいました。そこで,メイ首相は離脱案を3度目の議会採決にかけようとしたところ,議長に禁止されてしまったという状況なのです。
約束の3月29日に間に合わない場合,EU各国からの延期の許可が必要であり,もし認められなければ「合意なき脱退」となる可能性もあります。イギリスの動向に注目が集まります。