本記事は教養記事シリーズその14です。その他の教養記事はコチラの目次をご覧ください。
5Gって?
3G/4G/LTEとの違いは?
どのような技術が利用されているの?
将来どのように活用されるの?
5Gとは
5Gとは現在開発と実用化が進められている次世代の通信システムのことを指します。5Gを理解するためには,まずはGという言葉を理解しなくてはいけません。5Gの”G”は「Generation(世代)」の頭文字からとっていて,通信システムの世代を表します。数字が大きいほど新しい世代になり,通信速度が早くなったり消費電力が少なくなったりするなど高性能化していきます。
1G | アナログ通信 |
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2G | デジタル通信 |
3G | 14Mbps程度の通信速度 |
3.9G(LTE) | ~100Mbpsの高速通信 |
4G | 50Mbps~1Gbpsの高速通信 |
5G | 10~20Gbpsの高速通信 |
現在最も広く使われている通信システムは4Gです。しかし,山奥など電波が通じにくい場所では3Gも使われています。3Gは日本各地をほとんどサポートしているのが強みといえます。
5Gの利点
5Gは通信速度が4Gに比べて約10倍になります。それだけでなく,同時接続できる機器の数は約100倍,読み込み時間(遅延)は約10分の1になります。つまり,「通信めちゃくちゃ早くなるし,5Gを使えば一気に何台も接続できるようになるし,読み込みの時間も少なくなる」ということなのです。
これらの改善は,日本の社会がIoTを取り入れていくときに必要な基盤となります。IoTを実装していくためには,「速度の速さ」「接続可能な対象の多さ」「少ない遅延」が必要となります。
例えば,車の自動運転を考えてみましょう。信号機から<ストップ!>という信号が発せられたとしましょう。このとき,通信速度が速くなければ車は信号無視をしてしまうでしょう。また,<ストップ!>信号を大量の車に発せられたときに接続が不可能な車があれば非常に危険です。また,<ストップ!>信号がいくら早くても運転している車の読み込みが遅ければ,これまた信号無視をしてしまうでしょう。このように,5Gは次世代の通信システムであると同時に,次世代の社会システムを支えるプラットフォームでもあるのです。
5G実現を可能にする技術
5Gを支える技術としては,「超多素子アンテナ技術によるビームフォーミング」「ミリ波の利用」の2点が挙げられます。
ビームフォーミング
ビームフォーミングというのは,機器から発せられる電波を一方向に絞ることで効率の良い通信を可能にする技術のことを指します。ビームフォーミング自体はLTEでも利用されていた技術なのですが,5Gでは大量の相手を対象としている点が異なります。
ビームフォーミングを大量かつ多地点の通信環境で実現するために総務省からの委託をうけて富士通とNTTドコモは「超高密度マルチバンド・マルチアクセス多層セル構成による大容量化技術」を開発しています。(出典:次世代モバイル通信”5G”とは?【第2回】)
超多素子アンテナ技術
MIMO(multiple-input and multiple-output:マイモ)とも呼ばれるこの技術は,既存のビームフォーミングを拡張させるための手法でもあります。通信に利用するアンテナ数を増やすことで利用効率が上がり,大容量の通信が可能になるのです。5Gで開発されている技術は「Massive MIMO(マッシブマイモ)」と呼ばれており,電波の基地側のアンテナに超多素子を利用した技術です。
ミリ波の利用
5Gでは,従来の通信で利用していた周波数帯よりも高い周波数を利用しています。周波数を高くすることで通信速度が上がる一方で,電波がよりまっすぐ進みやすくなってしまうため障害物に耐性がなくなってしまいます。この課題に解決するために,NTTドコモとファーウェイは無線アクセスバックホール統合伝送に関する技術を開発しています。実際に,2018年4月に実験が行われており,ポジティブな結果が出ています。(参照:NTTドコモ5G)
IoT社会に向けて
2016年からスタートした国の計画である「第5期科学技術基本計画」では,日本が目指べき社会として「Society5.0」が提唱されました。Society5.0では,現実の空間とネットの空間が癒合して社会的・経済的な価値を生み出すとされています。(参照:内閣府HP)
IoT社会については,通信に関するプラットフォームが完成されている前提で議論される場合が多いです。しかし,いくら実現したい理想の社会があったとしても,ベースとなる通信技術が発達していなければ技術を社会に実装することは不可能です。5Gを利用した効率的で超便利な社会が実現することが期待されます。