本記事は教養記事シリーズその6です。その他の教養記事はコチラの目次をご覧ください。
ゴーン会長って?
逮捕の理由は?
今はどういう状況なの?
カルロス・ゴーン会長
カルロス・ゴーン氏はレバノン人の両親をもち,幼少期はブラジルで過ごしました。フランスの鉱業学校を卒業後,大手タイヤメーカーのミシュランで18年間勤務しました。
その後,フランスの自動車会社ルノーに副社長としてスカウトされました。1999年当時,約2兆円の有利子負債を抱える程の経営難に直面していた日産はルノーと資本提携することになり,その際にゴーン氏は日産の最高執行責任者(COO)に就任しています。
ゴーン氏は就任後,日産リバイバルプランと呼ばれる改善案を作成し,「余分な工場の閉鎖や無駄な人員の削除」「系列会社の株式売却」「販売車種の見直し」を徹底しました。その結果,短期間で日産の経営を立て直すことに成功し,ゴーンの名前は世界各国に響き渡りました。
他にも,ゴーン氏は英語・フランス語・スペイン語・アラビア語・ポルトガル語の5か国語を話せるという一面もあります。逮捕前までは,以下の役職を務めていました。
・ルノーの取締役会長兼CEO
・日産自動車の会長
・三菱自動車工業の会長
逮捕の理由
ゴーン社長の逮捕理由は「金融商品取引法違反」です。
金融商品取引法というのは,お金の取引において不正な行為を禁止する法律のことです。つまり,ゴーン氏が逮捕された理由は金融取引において不正な行為の疑いがかけられたからなのです。
それでは,ゴーン氏にはどのような不正行為の疑いがかけられているのでしょうか。逮捕当日の報道を引用してみます。
日産自動車(本社・横浜市)のカルロス・ゴーン会長(64)が自らの報酬を過少に申告した疑いがあるとして、東京地検特捜部は19日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑でゴーン氏を逮捕した。過少申告した金額は億単位にのぼるとみられる。
朝日新聞デジタル[2018年11月19日]
「自らの報酬を過少に申告した疑い」とありますね。この行為が不正として疑われているということです。申告という部分に関しては
・所得税の確定申告(税務署)
・有価証券報告書での申告(株主向け)
の2種類が論点となっています。
ゴーン氏の過少申告の動機としては以下の2つが考えられます。
・所得税を減らす
・会社の業績を良く見せる
もちろん所得が多いほどより多くの税を納める必要があるので,所得税の確定申告の際に所得を少なく申請することで脱税を図ったのです。また,株主に対してもゴーン氏の所得を少なくすることで相対的に会社の利益を多く見せていたのです。
他にも,ゴーン氏の所得があまりにも多すぎると株主からの評価が下がってしまうという懸念点もあったと考えられます。
今回の事件の発端は内部告発だとされています。日産関係者からの通報を受けて内部調査を行った結果,会社資金の私的な利用やサウジアラビアの知人への送金などを含む複数の違法行為が発見されたということです。
現在の状況(2019年3月12日)
ゴーン氏はすでに釈放されています。また,以下の引用にもあるようにゴーン氏の弁護士も無罪を確信しています。
日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告(64)を巡る一連の事件で、ゴーン元会長の新たな弁護人となった弘中惇一郎弁護士は20日、国内外のメディアの取材に対して「無罪を確信している」と述べ、裁判で無罪を主張する方針を示した。弘中氏は一連の事件について「日産内部で処理しなければならない問題を検察に持ち込み、検察が取り上げたという側面が強い」との印象も語った。
日本経済新聞[2019年2月20日]
実際にゴーン氏は1月30日のインタビューで,会社利益を私物化した行為の合法性やサウジアラビアの知人への送金の合法性を主張しました。もし本当に無罪なのであれば,自動車業界だけでなくゴーン氏を不当に長く拘置し続けた日本の制度の良し悪しも問われることになるでしょう。今後の動向にも注目していきたいです。