この記事はレビュー記事シリーズのドラマ「Nのために」編です。キャストや使用楽曲,あらすじ等をザっと振り返った後に,全体を通して考察を加えていきます。レビュー記事の目次はレビュー記事のまとめページです。
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評価
管理人のレビュー:
大好きな作品です!ここまでストーリー性とメッセージ性のバランスが取れた作品は珍しいのではないでしょうか。
主なキャスト
●榮倉奈々(杉下希美)
●窪田正孝(成瀬慎司)
●賀来賢人(安藤望)
●小出恵介(西崎真人)
●徳井義実(野口貴弘)
●小西真奈美(野口奈央子)
●三浦友和(高野茂)
●原日出子(高野夏恵)
主な受賞
●ギャラクシー賞2014
●第83回ザテレビジョンドラマアカデミー賞
使用楽曲
●「Silly」(家入レオ)
あらすじ
2014年のスカイローズガーデンの夫婦殺害事件をめぐって,知り合い同士で合った西崎・杉下・成瀬・安藤が偶然にも同じ場所に居合わせたことから,4人は事件への関与を疑われることになります。テレビからジングルベルが流れる,クリスマスイブの出来事でした。結局は,〝自白〟をした西崎が殺人犯として逮捕され,西崎は刑務所の中で10年間を過ごしました。
時はさかのぼること10年。杉下と成瀬は瀬戸内海の小さな島「青景島」で高校時代を共に過ごしました。杉下の家庭は,父親の勝手な行動により崩壊の危機に瀕していました。成瀬はそんな杉下を救おうとている最中に,自分の家を火事でなくしてしまいます。よく夜に出歩いていた成瀬は,村の駐在である茂に放火犯として疑われました。それを知った杉下は,成瀬をかばうために,奨学金の申請書を成瀬に譲ることでアリバイをでっちあげました。この火事により,茂の妻である夏恵は燃え盛る家から成瀬の父を救おうとして,声を失ってしまいます。
時は少し進み,杉下は大学で安藤と出会います。2人は野ばら荘というボロアパートの同居人でもあり,そこで西崎と出会います。野ばら荘は都市開発によってつぶされる危機にあったため,杉下・安藤・西崎の3人は野ばら荘を守るために「N作戦」を決行します。そこで三人は,スカイローズガーデンの住人であり,安藤の上司でもある野口貴弘と野口奈央子と接触します。
野口の担当するプロジェクトが頓挫し,そのやりきれなさから野口は優秀な安藤へ嫉妬心を募らせていきます。一方で,心に闇を抱える西崎は,同じく心に闇を抱える奈央子の異変に気付きます。西崎は,奈央子を救うために「N作戦II」を決行しますが,予想外の出来事が重なり計画は失敗に終わってしまいます。それだけならまだしも,N作戦IIは殺害事件へと発展してしまったのです。テレビからジングルベルが流れる,クリスマスイブの出来事でした。
定年退職緒した茂は,時効まで1年を切った放火事件の真相についてモヤモヤした気持ちを抱えていました。仕事を辞めた茂には時間があったため,東京に出向いて放火の事件の真相,そしてスカイローズガーデンでの殺害事件で4人が現場に居合わせていた〝偶然〟の真相を探ろうとします。様々なことが明らかになっていきます。彼ら,彼女らは「Nのために」紐づけられていたのです。
感想/解説
終始圧倒された作品でした。寝る間も惜しんで見てしまうほど,中毒性の高いドラマです。内容はもちろん,細部にまでわたる繊細な描写,伏線回収の仕方,メッセージ性なども含めて素晴らしい作品だと思います。
内容の泥臭さとは対照的に,作品を通して爽やかな印象を受けました。というのも,肉体的な描写が普通のドラマに比べて少ないのです。本作品には多くの男女が描かれますが,生々しい描写をされるシーンはごくわずかです。タイトルや最終シーンでも爽やかな印象を与えるような工夫がなされているように思えます。内容としては,私たちの心にズッサリ刺さって受け止めるのに時間がかかりそうなものばかりですが,後味はサッパリしているのが不思議であり,本作品の腕の見せ所なのだと思います。
以下では,3つのテーマに絞って感想・解説をお伝えしていこうと思います。
●「Nのために」の解釈
●アニメーションの工夫
●愛の形
Nのために
この作品の題名「Nのために」というには,どのような意味だったのでしょうか。作品中にはあまりにも多くの「N」がいて,様々な解釈が可能になっています。各登場人物に焦点を当てながら考えていきたいと思います。
杉下
杉下にとってのNというのは,成瀬であり,安藤であり,野ばら荘であり,そして何より自分であったのだと思います。成瀬のためには,放火犯を疑われないようにするためにアリバイをでっちあげました。安藤のためには,病気である自分が迷惑をかけないように,一緒になることを拒否しました。野ばら荘がつぶされるのを防ぐために,2つのN作戦に協力しました。
作品を通して,杉下は多くの場面で自分を犠牲にして他者の幸せを優先します。自分の幸せは,自分でつかみ取る。誰にも頼らずに生きていこうとしたのです。そのために,島を出ました。しかし,作中でよく使われる言葉である「自分のために生きる」に代表されるように,杉下は病気をきっかけに他者に頼ることの大切さに気付きます。最後は,自分の幸せをつかむためにホスピスではなく「島で成瀬君と過ごす」選択をしたのです。
成瀬
成瀬にとってのNは,杉下でしょう。同時に,自分でもあると思います。成瀬は,杉下にアリバイを作ってもらった恩返しをしたいと感じていることや,作中で度々描写される杉下へ好意があると読み取れる仕草などから,杉下という存在が行動の原動力であったのは間違いないでしょう。しかし,最終的には東京を離れて島で店をオープンするなど,自分の夢を追いかけることも忘れていません。後述の安藤とは対照的に,成瀬からは内に秘めるような愛情を感じます。
安藤
安藤にとってのNも,杉下だと思います。安藤は,杉下にプロポーズしました。大学でもモテるであろう安藤が,婚約指輪を拒否されたときに「何年後になるか分らないけど気持ちが変わるかもしれないから」という趣旨の発言をしています。読み替えると,一生杉下を愛し続ける決意を固めていたということになります。
事件当日に外側のチェーンをかけたのも,杉下の愛情を確かめたかったからです。愛情が強すぎるがゆえに,成瀬という幼馴染の存在が気になって仕方なかったのです。先述の成瀬とは対照的に,アクティブな愛情を感じます。
西崎
西崎にとってのNは,奈央子だったでしょう。幼少期のトラウマを持つ西崎は,他者の弱さに人一倍敏感です。西崎と奈央子は,深いところで共鳴し合っていました。…ように思えました。最後の事件現場で,奈央子は逃げ出せる状況にありながら,夫から杉下を離させるように西崎にお願いします。西崎は,このような裏切りにも思える行為をされながらも,最後は自分で全責任を負いました。
その他
奈央子にとってのNは,やはり野口だったのだと思います。最後まで,野口と向き合い続けました。野口にとってのNは,自分でしょう。プライドを守るためなら,将棋で勝負を中断することも,暴力を振るうこともするのです。茂にとってのNは夏恵で,事件の真相を探るために全力を尽くし,生活面でも夏恵を支え続けました。夏恵にとってのNは…。誰だったのでしょうか。
アニメーションの工夫
本作品は,内容だけではなく演出にも数々の工夫が凝らされています。タイトルシーンも鮮やかな色で統一されており,水に沈むシーンが伏線として利用されています。(出典:TBSオンデマンド)
また,高校時代・事件当日・現在の3つの時間軸をつなぐのは,写真を利用した回想的な演出です。こちらについては,最後の回想シーンで写真の切り替えスピードが初めてゆっくりになっていき,事件の収束と杉下の最期を暗示させます。
見ごたえのある映像が盛りだくさんの作品でした。
愛の形
本作品のメッセージの中で1つ採り上げるとすれば,人や環境によって愛の形は変わってくるということです。
なんてツッコまれそうですが…。一応,書き続けていきます。文学少年の西崎は,杉下に「本当の愛って何だと思う?」と聞きます。杉下は成瀬のことを思い浮かべながら,「罪の共有」と答えます。当たり前のことですが,大好き大好きと言葉に出して抱きしめることだけが愛ではありません。罪の一端を担うことも愛の1つの形ですし,身を引くことも愛の1つの形です。
さらに,本作品で印象的なのが「西崎の母親の愛」「野口の愛」です。西崎は,幼い頃に母親から暴力を振るわれていました。体中は傷だらけで,腕にはタバコでつけられたやけどの跡が残っています。しかし,西崎の母親は西崎のことを愛していたのです。自分の愛すべき存在が現実にあることを確認するかのように,暴力を振るっていたのだと思います。
野口も,作品の終盤で勝手な行動をする奈央子に暴力を振るいますが,落ち着いた後には「ごめん。どうしようもないんだ。」という言葉を残しています。愛は時として憎しみという感情にもなり得てしまうのです。一般に,愛とは正反対の行為として捉えられている暴力が,愛を感じるために利用される世界もあります。卵が先か,鶏が先かの議論になりますが,どんな形であれ人を愛する結果が表出すれば,それを愛と呼ぶしかないのかもしれません。
「Nのために」を無料で楽しむ方法
こちらの記事でも解説している通り,基本的には「U-NEXT」と「TSUTAYA DISCAS」の2つのサービスを利用すればOKです。ぜひ,お得に作品を楽しんでくださいね。