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【国際ビジネス論】クラウドファンディングとは?

クラウドファンディングは,「インターネット上のプラットフォームを介して不特定多数から資金を集める」手法の1つです[[1]].その手軽さと柔軟性の高さから,近年注目を集めている資金調達方法です.

クラウドファンディングには,どのような特徴があって,何が利点・欠点になるのでしょうか.また,国際ビジネス論として考えるとき,クラウドファンディングはどのような位置づけになるのでしょうか.そこで,この記事ではクラウドファンディングに焦点を当てて,その特徴を国際ビジネス論の観点からお伝えしていきたいと思います.

★この記事の流れ★

クラウドファンディングについて
定義
種類
特徴
問題点
国際ビジネス論
の観点からそれぞれ考えていきたいと思います.

 

定義

クラウドファンディングには,一般的な定義が存在しているわけではありません.内閣府によると[[2]]「新規・成長企業等と資金提供者をインターネット経由で結び付け、多数の資金提供者から少額ずつ資金を集める仕組み」とされています.

この説明には,重要な点が2点あります.1点目は「インターネット経由で」という点です.クラウドファンディングはインターネットというプラットフォーム上で行われる取引のことを指します.2点目は「多数の資金提供者」という点です.クラウドファンディング(crowdfunding)は,「crowd(=群衆)」と「funding(=資金)」という2つの単語の組み合わせでできている造語です.

これらの観点から,クラウドファンディングは従来の銀行や投資家から多額の資金を調達する方法とは根本的に異なる方法だといえます.

 

種類

クラウドファンディングは,資金調達の「主体」「目的」「提供の仕方」「リターンの有無」「利益の有無」から5つの種類に分けることができます[[1]].

クラウドファンディングの種類

1.ソーシャルファンディング
2.ファンド型
3.株式型
4.購入型
5.寄付型

それぞれ詳しく見ていきましょう.

 

1.ソーシャルレンディング(融資型)

ソーシャルレンディング(融資型のクラウドファンディング)は,企業や個人に対して比較的高い金利でお金の貸し付けを行うサービスです.銀行の定期預金に比べて金利が高いことが多く,少額から投資が可能であることから,新しい資産運用方法として注目を集めています.

 

2.ファンド型

ファンド型のクラウドファンディングは,日本ではあまり普及していないタイプのサービスです.融資型と同様に,企業や個人に対してお金の貸し付けを行い,リターンは支援した相手の売り上げに応じて分配されるという仕組みになっています.また,リターンがお金だけに限らない点も特徴的です.

 

3.株式型

株式型のクラウドファンディングは,将来の成長が見込める企業の未公開株(非上場株)を購入することができるサービスです.投資した未公開株が公開・上場すれば大きな利益を生むことができますが,非常にハイリスクな投資方法であることが特徴的です.

 

4.購入型

購入型のクラウドファンディングは,リターンとして商品やサービスが得られるサービスです.お金が得られる1~3の方法とは異なり,クラウドファンディング限定のリターンを得られる点が特徴的です.日本では最もポピュラーな手法なのではないでしょうか.

 

5.寄付型

寄付型のクラウドファンディングは,一般的な寄付と同様でリターンを伴わないサービスのことです.日本では,東日本大震災後から急速に広がった形態であり,継続的に支援を行うサービスも多いです.

 

特徴

・ネット上のサービス
・SNSとの相性
・審査がない
・透明なお金の使用方法

クラウドファンディングの特徴は,サービスがインターネット上で行われるという点にあります.これは,誰でも気軽にサービスを利用できるという利点だけでなく,将来的に実現されるであろうキャッシュレス社会に対応できる可能性を秘めています.

また,TwitterやInstagram,フェイスブック等の社会的影響力のあるソーシャルメディアと併用して資金調達ができる点も特徴の1つです.SNSとは非常に相性がよいので,商品やアイディア,企画発案者の人間的魅力などを社会に広めることもできます.

資金が少ない個人や,規模の小さいベンチャー企業にとっては,金融機関からの厳しい審査を受けずにプロジェクトへの共感を武器にして資金調達できる点が大きな魅力でしょう.

一般的な寄付との違いとして,お金の使われ方やプロジェクトの進行具合が確認できる点が大きく異なります.クラウドファンディングでは,自分が支援したプロジェクトでお金がどのように使われているのかが分かるので,社会的支援を目的とした場合は特に安心感や満足感を得ることができます.

 

問題点

・リターンがないリスク
・キャンセル不可
・手数料
・プライバシー

クラウドファンディングでは,多くのリスクを伴います.例えば,支援したプロジェクトが失敗した場合リターンが返ってこない可能性も考えられます.また,一度支援をしたら原則キャンセルできないのが一般的です.

また,リターンの受け取りに際して様々な手数料が発生することもデメリットの1つでしょう.例えば,商品やサービスの発送料であったり,分配金の振込手数料などです.

インターネット上でのサービスというのは,便利である一方で社会的な炎上などの危険性も伴います.基本的にネット上に公開された情報は削除することができませんので,安易な企画発案はできません.

 

国際ビジネス論

ここからは,国際ビジネス論を絡めてクラウドファンディングについて考えていきます.まずは,「ニューパワー」と「オールドパワー」という側面から考察していきたいと思います.

 

ニューパワーとオールドパワー

企業の性格を分類する1つの指標に,「ニューパワー」と「オールドパワー」という概念があります[[3]].ニューパワーはとオールドパワーの特徴を,以下に示します.

ニューパワー

・柔軟性
・多くの人が対等な関係で参加する
・開放的
・更新される
・増幅されやすい
・ボトムアップ

オールドパワー

・固定的
・限られた人が規則を順守して参加する
・閉鎖的
・ダウンロードされる
・消費を求める
・トップダウン

価値観とモデルによる分類

少し例を挙げて考えてみましょう.ウィキペディアはモデルも価値観もニューパワーである「Crowds」カテゴリに当てはまります.分権的なシステムで,従来のいわゆるリーダー的な存在がなく,ボトムアップ的な更新が続けられています.多くの人が参加して,非常に開放的でもあります.

対して,アップルはモデルも価値観もオールドパワーである「Castles」カテゴリに当てはまります.1つの信念に従って固定的なブランドを築き上げ,他ブランドとの差別化を図るために非常に閉鎖的なのが特徴です.

フェイスブックは,モデルはニューパワーであり価値観はオールドパワーである「Connectors(懐柔者)」カテゴリに当てはまります.私たちが使うSNSとしての側面は,多くの人が開放的に対等な関係で参加できることに加え,炎上などの増幅されやすい側面も含まれています.しかし,会社としてのフェイスブックは全世界にビックデータを開放しないで閉鎖的な情報共有の姿勢をとっています.

パタゴニアは,モデルはオールドパワーであり価値観はニューパワーである「Cheerleaders」カテゴリに当てはまります.パタゴニアは多くの機能的な商品を販売していますが,その製作過程に一般の人々を介入させません.しかし,大量消費主義への反対表明や,気候変動への取り組みの呼びかけ,労働者の賃金を公開するなど,価値観はニューパワーであることがうかがえます[[4]].

 

クラウドファンディングとの関係

以下では,クラウドファンディングをニューパワー・オールドパワーという指標を用いて考察していきます.まず,モデルについては,インターネットを介して多くの人が開放的に参加可能であるという点から,全ての種類のクラウドファンディングがニューパワーだと考えられます.

価値観については,「ソーシャルファンディング」「ファンド型」「株式型」がオールドパワー,「購入型」「寄付型」がニューパワーだと考えられます.「ソーシャルファンディング」「ファンド型」「株式型」は固定的な投資をして,利益を得るためにはある程度の時間が必要です.さらに,決められた規則などにより配当が決定され,資金力がある人が力を持ちやすい閉鎖的な一面もあります.対して,「購入型」「寄付型」は共感や限定性といった価値に惹かれた多くの人が,対等な関係でプロジェクトを支援する仕組みになっています.

1点注意するべきなのは,クラウドファンディングのプロジェクトにはリーダーが存在するという点です.一般に,ニューパワーにはリーダーが存在せず,オールドパワーにはリーダーが存在します.ですので,クラウドファンディングをプロジェクト単位でみると,モデルはオールドパワーに相当します.

 

従来の寄付の位置づけ

それでは,従来から存在する寄付の位置づけはどのようになるのでしょうか.試しに,東日本大震災の支援を目的とした,あるコンビニの募金箱を例にとって考えてみましょう.結論からお伝えすると,モデルも価値観もオールドパワーであるのが従来の募金活動です.

あるコンビニに設置された募金箱では,限られた人しか募金に協力することができません.さらに,一旦募金をしてしまえば「支援」という大きなくくりで利用されるため,詳しいお金の使われ方を知ることはできません.支援金の分配の決定には,限られた人しか参加しません.決まった規則に従って,支援金を分配する場合もあるでしょう.

募金というのは,クラウドファンディングの「寄付型」がインターネットを介さない形で表現されたモデルだと捉えることができます.そのような意味で,クラウドファンディングが「インターネット上のサービス」として説明される意図がよく分かります.

 

まとめ

いかがでしたでしょうか.今回は,クラウドファンディングというサービスシステムをニューパワー・オールドパワーという側面から考察を加えました.

おそらく,多くの人が「Apple」と聞くとニューパワーだと思うのではないでしょうか.しかし,ニューパワーというのは決して「先進的だ」という意味ではなく,どのような形で影響力や権力を持ち得るかの1つの分類でしかありません.Appleは確かに先進的ではありますが,影響力や権力の持ち方は非常に閉鎖的であります.

これからの時代,どちらのモデルを利用すればよいのかという問いに,答えはありません.強いて答えるならば,両方のモデルの併用・つまみ食いというモデルが望ましいのでしょう.なぜならば,どちらのモデルにもメリット・デメリットがあるからです.

大切なのは,両者の特徴をとらえたうえで,社会的なシステムの発展に合わせて柔軟なモデルを構築していくことなのではないでしょうか.

参考文献

[[1]]井上徹. “クラウドファンディングを巡る諸問題: 展望 (白井宏明先生退職記念号).” 横浜経営研究 38.2 (2017): 137-149.
[[2]]内閣府HP-クラウドファンディングに係る制度整備に関する意見
[[3]]Heimans, Jeremy, and Henry Timms. “Understanding “new power”.” Harvard Business Review 92.12 (2014): 48-56.
[[4]]https://www.patagonia.jp/home(Patagonia公式HP)

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