アフターデジタルって聞いたことあるけど…?
本屋さんでも見たことのある言葉だな。
本記事では,巷で話題の「アフターデジタル」という概念について,原著「アフターデジタル」を参考にして,簡単にまとめていきたいと思います。目標としては,この記事を読むことで他の人に「アフターデジタルとは何か」「なぜアフターディタルが叫ばれているのか」を説明できるようになることです。
以下が原著の書籍になります。
アフターデジタルとは
結論からです。
オフラインがデジタル世界に内包されること
を「アフターデジタル」と呼びます。しかし,これだけ聞いても何のことだかサッパリだと思います。そこで,まずはアフターデジタルの対概念である「ビフォアデジタル」を確認していきます。
私たち日本人の考える「デジタル化」は,多くの場合仕事の効率化を指します。例えば,日本人に無人レジを導入する理由を問えば,「人件費を削減するため」という回答が得られることが多いでしょう。
しかし,本当のデジタル化というのは,我々のリアルに生活している世界(オフライン)と,ネットワーク上で相互に繋がれた世界(オンライン)の境界を曖昧にすることを指します。デジタルを「活用」するのではなく,デジタルに「住む」というのがアフターデジタルの考え方です。
アフターデジタルの考え方に立脚すれば,無人レジを導入する理由は「お客さんにより満足してもらえるようなサービスを提供するため」です。レジ要員をお客さんと人間的で暖かいやり取りを行えるような役割にシフトさせることで,ユーザーエクスペリエンス(お客さんの満足度)を向上させることができます。
DXを捉え直してみる
最近就活でもよく聞くようになった言葉に「DX(デジタルトランスフォーメーション)」があります。多くの方々は,DXを「従来アナログであった領域をデジタルに置き換えることで効率的に仕事を行えるようにすること」と捉えているでしょう。
しかし,上でもお伝えした通り,デジタル化を効率化と捉える考え方は,ビフォアデジタルです。DXをアフターデジタルとして捉えると「社会インフラやビジネス基盤がデジタルに変容(トランスフォーム)すること」となります。まさに「オンラインに住む」を体現している概念です。
リアルチャネルの活用
リアルチャネルを活用する立場に立つと,どのような観点でリアルを活用できるのでしょうか。それは「より高い感情価値や体験価値を求められる」という点です。メールやチャットではなく,対面で話すことの方が人間は感情を動かされ,鮮明な体験をすることができる傾向にあります。
つまり,アフターデジタルでは「UX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させる」ことを目的にオフラインを活用するということになります。そのためには,いかに顧客との接点を持つことができ,それを継続できるかがカギとなります。
OMO
アフターデジタルに立脚した企業では,OMO(Online Merges with Offline)という考え方が採用されます。というより,参考図書において,OMOは「アフターデジタルを競争原理とするデジタル成功企業の思考法」と定義しています。OMOは事後的に定義されるようですね。
OMOでは,もはやオンライン・オフラインといったようなチャネルによる分類はなくなります。両者が融合しているため,「顧客はその場その時で一番便利な行動をする」という発想に基づいて戦略を練ります。そして,一番便利な行動の行き着く先に,自分たちの企業を利用してもらうためには,いかに顧客との接点からデータを収集してUXを高められるかにかかっています。
UXを深掘ってみる
上では,UXを「感情価値」「体験価値」などと表現しましたが,ここではもう少しこれらを深掘ってみようと思います。感情価値と体験価値が高い概念を,「感動体験」と呼ぶことにします。
参考書籍で紹介されている例としては,以前泊まったホテルでベットの枕を固い枕と交換してもらったことを覚えてくれていて,次に泊まった時は最初から固い枕に交換されていたというような感動体験が挙げられます。
ここでは,ホテルに宿泊するという行動が「機能的(=便利である)」という前提があります。つまり,このホテルが宿泊するという面において不便な点があれば,感動体験を得られにくいというのです。機能性が担保されている場合にのみ,感動が感動になり得るということです。
感動体験を与えるためには,顧客体験は一期一会であってはなりません。アフターデジタルの世界観で顧客との接点を持ち続けることで,UXを向上させるような感動体験を与えるためのデータを集めることができます。そして,UXが向上すれば,ユーザーも積極的にサービスを利用するようになり,さらにデータがたくさん集まります。このサイクルを,いかに回し続けるががアフターデジタルにおける企業戦略のキモです。
日本人の強み
ここで,アフターデジタルと日本人について,何か気づくことはないでしょうか。日本人の得意技は,おもてなしです。おもてなしこそ,最高のUXを演出するための精神ではないでしょうか。つまり,日本とアフターデジタルは,本来相性が良いはずなのです。
最近「モノからコトへ」と叫ばれることが多くなりました。製品単体がもたらす価値というよりかは,その製品を継続的に利用して得られる体験に焦点が当てられるようになったのです。従来は,メーカーはペルソナに対して最適なモノ作りをしていれば,儲けることができる時代でした。
しかし,これからは高品質なUXを再現するための製品をメーカーが下請けするという形態に変化していきます。このような観点からも,メーカーを含めた多くの製品提供型の企業は,寄り添い型のビジネスモデルを構築する必要があります。
企業に求められる変革
企業という組織自体も顧客の体験を中心に構築し直す必要があります。例えば,従来であれば特定の「ペルソナ」を想定して戦略を立てていたところを,「特定の段階・状況に置かれた顧客を相手にする」という観点で整理することが求められます。
企業における変革を上から「ビジョン」「事業戦略」「ビジネスモデル」として考えてみます。ビジョンは,顧客がどのような状態になっているかを会社全体でイメージを共有できる言葉になっていなければいけません
事業戦略については,属性ではなく状況を見なくてはなりません。これは,クリステンセンが指摘する「ジョブ」という概念も同じで,特定の状況に置かれた人が持っている解決したい課題のことを指します。
ビジネスモデルは,製品を接点の1つとして継続的に良い体験を提供するために寄り添っていくようなモデルが望ましいです。
日本企業に対する変革
参考書籍では,中国を先例として取り上げているため,中央集権国家だからこそ成し遂げられた変革である可能性も否めないとしています。日本では,企業のトップが変革を呼びかけたところで,変わりにくいのが現状でしょう。そこで,まずはアフターデジタルの世界観の理解からはじめ,実行環境を整え,小さな成功体験を積み重ねることで企業を徐々に変革していくという段階を経る必要があります。
参考書籍
こちらの書籍をご覧いただくのが,アフターディジタルに精通するための一番手っ取り早い方法です。