本記事は教養記事シリーズその3です。その他の教養記事はコチラの目次をご覧ください。
地銀の収益環境は今どうなっているの?
信用コストとは?
有価証券とは?
地銀と第二地銀って?
地方銀行の現状
地方銀行は,各地域の金融/経済の中心的な役割を果たしています。しかし,地域の少子高齢化や都心への人口一極集中によって地方銀行は厳しい状況に面しています。地方銀行が直面している問題として,お金の貸し出しによる収益力の低下が挙げられます。この問題の原因は,以下の3点が考えられます。1つずつ見ていきましょう。
①金融緩和政策
②需要の減少
③地方金融機関どうしの競争
金融緩和政策
2016年には日本銀行が経済活性化のためにマイナス金利政策を決定しました。それにより,超低金利という状況が長く続いています。特に国内事業の割合が高い地方銀行は,日銀に預けている預金の金利によってお金を手に入れられなくなってしまいました。
需要の減少
地方銀行がお金の貸し出しで利益を得るためには,貸し出す相手がいなければ話になりません。最近では回復傾向にあるものの,少子高齢化や地方の人口減少から,やはり企業や家計による地方銀行への需要が伸び悩んでいることが1つの原因でしょう。
地方金融機関どうしの競争
最近ではネット銀行やフィンテック技術の躍進から,地方金融機関の在り方も変わってきています。当然,ライバルの金融機関が多ければ多いほどお金の貸し出しによる利益を得ることも難しくなってきます。
最近の報道
ロイター通信によると,2019年3月5日に以下のような報道がなされています。
地方銀行を取り巻く経営環境が、一段と厳しさを増している。減少傾向にあった信用コストが拡大に転じ、世界経済の減速を背景にした株価の下落によって有価証券の益出し余力も低下しており、この2つの収益押し上げ要因に局面変化の兆しが出ているためだ。地銀・第二地銀104行のうち、2018年12月期に3行が最終赤字に転落し、11行で有価証券が含み損となった。
[東京 5日 ロイター]
少し難し単語ばかりが出てくる文章ですね。1つずつ確認していきましょう。
信用コストとは
信用コストとは銀行の貸し出し業務における主要3コストのうちの1つで,貸し出したお金が返ってこない場合のリスクに対応するための費用のことを指します。たとえば,倒産寸前のA社にお金を貸し出す場合を考えます。この場合は,A社の信用コストが高いということになります。
有価証券とは
モノ自体に価値がある財産のことを有価証券といいます。たとえば,切手も有価証券の仲間に入ります。一般的には国債や株券のことを指すことが多いです。
益出し余力とは
益出しというのは,あるモノを購入した値段よりも高い値段で売ることで得る利益のことを指します。つまり,有価証券の益出し余力というのはモノ自体に価値がある財産を利用して益出しができる可能性のことを指します。
含み損とは
含み損というのは,益出しの反対です。つまり,あるモノを購入した値段よりも低い値段で売ることによる損失のことを指します。有価証券が含み損というのは,有価証券による益出しがマイナスである状態を指します。
地銀と第二地銀
地方銀行は,全国地方銀行協会の会員である銀行のことを指します。対して,第二地方銀行は第二地方銀行協会の会員である銀行のことを指します。
それぞれの協会は歴史的な背景により違いが生まれました。地方銀行は,昔から大規模な銀行として利益を得ていたモデルを指し,第二地方銀行は消費者金融のようなモデルを指しているとイメージするとよいかと思います。
要旨
ロイター通信さんが示している事実は,「信用コストがかさむようになり」「株価が下落したことにより」地方銀行は「財産を利用して利益を得ることが難しい状況になってしまった」ということです。1つずつかみ砕いて理解すれば一見難しそうな記事でも身近に感じることができると思います。
「今、地方銀行に何が起こっているのか」(菅谷,大和総研)https://www.dir.co.jp/report/research/introduction/financial/regionalbank/20170116_011580.pdf