本記事は教養記事シリーズその4です。その他の教養記事はコチラの目次をご覧ください。
貿易戦争とは?
アメリカはなぜ赤字になるの?
日本への影響は?
貿易戦争とは
国家(地域)間の貿易不均衡から生じた経済的対立状態(深刻な貿易摩擦)を戦争にたとえた表現。2018年3~4月に激化した米中の経済対立を指すことも多い。
出典:(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」
貿易戦争とは,貿易による利益の不平等をめぐって関税やその他の制限をかけ合う争いのことを指します。特に,最近ではアメリカの中国に対する貿易赤字をめぐる争いのことを指すことが多いです。
アメリカが貿易赤字である理由
それでは,なぜアメリカは貿易赤字となっているのでしょうか。その理由は「アメリカが経済成長を続ける先進国である」からなのです。以下で主な理由を詳しく見ていきましょう。
輸入需要の増加
アメリカの経済成長率は最近でも2~3%と比較的高い水準を保っています。
国内の経済が好転すると当然輸入の需要も高まります。そうなると,輸出額に対して輸入額が高くなるため貿易赤字の原因となってしまいます。
国際的な信用力の高さ
アメリカはその経済力から世界的に最も信用力のある国家の1つです。そのため,アメリカの通貨高(ドル高)になる傾向があります。ドル高の状況では,輸出に不利で輸入に有利であるために貿易赤字が進んでしまう原因になります。
製造コストの増加
国が経済的に発展していると賃金をはじめとする製造コストが上昇するため,製造業の競争力が低下してしまいます。結果的に輸出量の減少につながります。
日本への影響
貿易戦争は日本にどのような影響を与えるのでしょうか。まずは,貿易戦争を米中の二国間の問題として考えてみます。アメリカは中国に対する貿易赤字を解消するために,2018年7月6日には中国からの輸入品818品に対して840憶ドルにも及ぶ追加関税を発表しています。
例えば自動車を例にとって考えてみましょう。米中間で高い関税が課せられると,中国で製造している自動車の製造量は減少してしまいます。日本から部品を輸入して製造していることが多いため,中国で自動車が作られなくなると日本の中国への輸出量も減少してしまうのです。
次に,貿易戦争を日米の二国間の問題として考えてみます。アメリカは中国と同様に日本に対しても貿易赤字を抱えています。アメリカは日本に対して自動車産業への追加関税や農産物への関税引き下げを要求しています。
自動車産業に高い関税がかかれば,もちろん自動車やその部品の輸出量が減少します。同様に,農産物への関税が低くなれば外国産の農産物がより低価格で国内に出回ることになり,日本の農業は大きな打撃を受けてしまいます。
まとめ
貿易戦争は単に「両国の貿易による利益の不平等をなくす」という目的だけでなく,政治的な立場や状況も関係してきます。ですので,赤字を解消するためだけの解決策ではなく,より広範な影響を踏まえたうえで政策を決定していきたいところです。